「お腹の痛みが続く…」「血便が気になる…」「体重が減少してきた…」
こうした症状は、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)の可能性があります。
これらの疾患は慢性的な腸の炎症を特徴とし、適切な治療を行うことで症状をコントロールし、日常生活の質を維持することが可能です。
また、内視鏡検査は、炎症の正確な診断や治療計画の立案において非常に重要な役割を果たします。
以下では、潰瘍性大腸炎とクローン病の症状や原因、治療法について詳しく解説します。
目次
潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎は、大腸(結腸と直腸)の粘膜に炎症や潰瘍が生じる疾患です。
症状は寛解と悪化を繰り返すことが特徴で、厚生労働省から指定難病に指定されています。
潰瘍性大腸炎の主な症状
- 下痢(血便を伴うことが多い)
- 腹痛(特に左下腹部)
- 貧血や体重減少
- 発熱や倦怠感
クローン病とは?
クローン病は、消化管のどの部分にも炎症が発生する可能性がある疾患です。
特に小腸や大腸に炎症が集中することが多く、腸管の深い層にまで炎症が及びます。
潰瘍性大腸炎と同じく指定難病です。
クローン病の主な症状
- 慢性的な下痢
- 腹痛(特に右下腹部)
- 発熱や倦怠感
- 痔瘻(じろう)や肛門周囲の病変
- 栄養不良や体重減少
疑わしい場合は腹部エコー検査を
潰瘍性大腸炎・クローン病が疑われた場合、当院で初めに行うのは腹部エコー検査です
これらの疾患がある場合、小腸や大腸が腫れてきます。エコー検査を行うと、外来診察時に、すぐに、苦痛や放射線被ばくなどがなく、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸が腫れているのかどうか判断できます。エコー検査を行うことで、診察時に大まかな診断がつきます。
内視鏡検査が効果的な理由
腸の粘膜を最も詳細に観察できるのが内視鏡です。
エコー検査で大まかな診断を行い、内視鏡検査(大腸カメラ)と組織学的検査で診断を確定します。
内視鏡検査のメリットは次のとおりです
炎症の有無や範囲の確認
大腸や小腸の粘膜を直接観察し、炎症や潰瘍の範囲や重症度を正確に把握できます。
組織の採取(生検)
必要に応じて粘膜の一部を採取し、がんや特定の感染症などの合併症の有無を確認します。
治療効果のモニタリング
治療後の炎症の改善状況を直接観察し、治療の効果を評価します。
合併症の早期発見
腸の狭窄やポリープ、腸管がんの早期発見に役立ちます。
当院では、最新の内視鏡機器を用いて、苦痛の少ない検査を提供しています。
鎮静剤を使用することでリラックスした状態で検査を受けていただけます。
潰瘍性大腸炎・クローン病の原因
潰瘍性大腸炎とクローン病の明確な原因は不明ですが、以下の要因が関与していると考えられています。
免疫異常
腸内細菌や食べ物に対して免疫が過剰反応し、腸の炎症を引き起こす。
遺伝的要因
家族内での発症リスクが高い。
環境要因
ストレスや喫煙、食生活の影響が発症リスクを高めることがあります。
治療方法
潰瘍性大腸炎とクローン病は、現在のところ完治する治療法はありませんが、適切な治療により症状をコントロールし、寛解状態を維持することが可能です。
薬物療法
- 5-アミノサリチル酸:5-ASA:腸の炎症を抑える基本的な治療薬です。
- ステロイド:急性増悪時にとても効果がある。副作用があるため長期使用は避けます。
- 免疫調節薬:免疫系を調節し、炎症を抑えます。
- 生物学的製剤(抗TNF-α抗体など):炎症を引き起こす物質を抑える効果があり、現在多数の薬剤が開発されています。
食事療法
- 潰瘍性大腸炎:高脂肪食や刺激物を控え、消化に良い食事を心がける。
- クローン病:低残渣(ていざんさ)食や栄養療法(経腸栄養、完全静脈栄養)が症状緩和に有効。
手術療法
薬物療法で症状がコントロールできない場合、潰瘍性大腸炎では大腸を切除する手術を行うことがあります。クローン病では腸の狭窄や瘻孔の治療のため手術が行われることがあります。
心理的サポート
ストレス管理や心身のケアを含めた包括的な治療が重要です。
当院では、潰瘍性大腸炎・クローン病の診療において、症状の詳細や生活習慣、家族歴を丁寧にヒアリングし、内視鏡検査や血液検査を組み合わせ、正確な診断を行います。
患者様にとって、最適な治療計画を提案させていただきます。
安心して日常生活を送れるようサポートいたします。お気軽にご相談ください!